ヴェネツィア・ビエンナーレ帰国展
土曜日に、乃木坂の「ギャラリー間」で行われている、第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展を見てきました。

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去年ヴェネツィアで開催されたこの展覧会の日本館のテーマは「en〔縁〕」というもので、12組の建築家が「人の縁」「地域の縁」「モノの縁」というテーマで作品を展示しています。

モダニズム全盛期のような、社会問題を大上段に振りかざす建築をつくることが難しくなった現在の状況の中で、もう少し小さなところからこの「縁」をテーマに地域に根差した建築を考えて行こうという試みです。

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目を引いたのはこの、西田司さんと中川エリカさんのシェアハウス。シェアハウスの文法通りに、共有部分と個室で成り立っているのですが、共有部分のキッチン・ダイニングがゆったりしていることと、各個室が廊下に向かって並んでいるのではなく、それぞれ専用の階段を上がることで、プライバシーが高く、スキップしたレベルの途中にサブの共有部分があり、コミュニケーションがいろいろなところで測られています。このプライバシーとコミュニティーのバランスが絶妙で、こんなシェアハウスだったら住んでみたいなーと思わせるものでした。

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仲建築設計スタジオの1階に食堂を持つソーホーも食堂を介して、ソーホーの利用者も街の人たちとコミュニケーションが取れる、開放的なプランで好感が持てます。

その他の作品もすべて、決して派手ではなく、いかにして建築が街の中に溶け込んでゆくかを模索しているものでした。
「縁」というのは、日本家屋の縁側にも通じるものではないかなどと、展覧会を見ながら考えました。
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台湾で見たもの―その8 亭仔脚
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台湾の街を歩いていて面白いなと思うのは、建物の道路に面した部分をアーケードとして開放して、歩道として使われていることです。
これは台北でも、台中でもほとんどの街並みがこうなっていました。歩道に屋根をかけるのではなく、建物の1階を歩道として開放しているのです。幅が4mほどと少し広めなので、歩道としてだけでなくいろいろな使われ方をしています。
日本統治時代にこの形が法的に整備され、「亭仔脚」と呼ばれているそうです。この部分は建物の建蔽率に算入する必要がなく、もし亭仔脚を設けない場合は道路から4m後退しなければならないという法律があるために、ほとんどの建物で亭仔脚を設けているそうです。

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台湾では道路をたくさんのバイクが走っていて市民の足になっていますが、このように亭仔脚が格好の駐輪場になっています。中には車を止めている人もいて、さすがに車が止まっていると人は通れず、車道に降りて歩かなければいけませんが、みんなおおらかに融通しあっている感じがします。あまりうるさいことを言わずにこのぐらいでいいのかもしれませんね。

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これは、僕たちが泊まっていた台北のホテルです。文化財にも登録されているという古い立派な建物ですが、1階部分はレンガのアーチを持つ優雅な亭仔脚になっていました。

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道路と部屋の間に内部と外部の緩衝地帯があるので、職人さんの仕事場になっているところなどは、ご覧のようにかなりオープンな使われ方をしています。

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そして、商店があるところでは、半分ぐらい商品をはみ出して、お店の延長として使われています。多少の雨が降っても濡れる心配がないところが良いですよね。

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そして、食堂はここにテーブルを出して、みんな楽しそうに食事をしています。台湾の10月はまだかなり暑いのですが、日差しがさえぎられるので格好の食事スペースになります。

このようにいろいろな使われ方をされている亭仔脚、とても良い工夫だと思いました。
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台湾で見たもの―その7 青田街
国立台湾大学の北門を出てしばらく行くと、戦前に台湾大学の日本人教職員たちが住んでいたという、青田街というところがあります。そこに昔の日本式の木造住宅が多く残っていると聞いて、行ってみました。

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大学の教授たちも多く住んでいたということで、今でも閑静な、少し高級な住宅街といった街に、こんな感じで確かに日本的な木造の建物が残っていました。
ここは何かの記念館と論語の教室として今でも使われているようでした。

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この青田茶館というところは雑誌にも出ていたのですが、かっては日本人の医学部教授の住居だったようです。

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鉄でできた門が中々凝った作りです。だいぶ錆びていましたが、建設当時のものでしょうか。

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門を入ると庭に面して、昔の日本をほうふつさせる建物に出会います。戦前ということですから、たぶん80年以上前のものだと思われますが、今では日本でもなかなか出会えない、懐かしさを感じさせます。

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中はギャラリーと茶館として使われています。ここはかっての玄関だったところでしょう。

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南側の庭を囲むように、コの字型に増築して、茶館として使われています。
僕たちもここで、ウーロン茶をいただきましたが、テーブルの上で丁寧に入れてくれて、とてもおいしいお茶でした。

戦前の木造住宅なんて、日本ではほとんど残っていないわけですが、台湾では今でもリノベーションして、大事に使っていてくれることが、とてもうれしく思いました。

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青田街を抜けてしばらく歩いていると、夕暮れの中人々の行き交うにぎやかな通りに出ました。
道路でも、公園でも若者もお年寄りもみんなベンチに座ったり、立ったままだったり世間話に興じている風景が何ともいい感じです。イタリアの街を連想させる風景でした。
日本人は夕暮れに表に出て、近所の人と話に興じるということがあまりないのは何故なんでしょうね。
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台湾で見たもの―その6 宮原眼科
単体の建物をリノベーションした例として、台中で「宮原眼科」を訪ねてみました。

宮原眼科は、戦前に日本人の宮原さんという眼科医が開いていた医院で、1927年の開設というので、すでに90年たっている建物です。これをお菓子のメーカーがスイーツショップとしてリノベーションしています。

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もともとレンガ造2階建て立派な建築ですが、そのレンガの外壁を残してガラス張りの3階を増築しています。構造的にはこの古いレンガ壁に負担を掛けないように内側に鉄骨で3階建ての新しい構造物をつくっている感じです。

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入り口部分にはギリシャ風の円柱が2本対で並んでいます。緑光計画でも感じたことですが、古い部分の傷や破損部分は補修しないで、そのまま見せることで、建物の歴史を感じさせるところが台湾風なのかと思いました。

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台湾では建物の一部を亭仔脚と呼ばれる、歩道として開放することが一般的ですが、ここでも優雅なアーチの亭仔脚が残っていました。

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内部に入ると一転して三層吹き抜けの大きな空間に、凝った造りの陳列棚が並んでいて、いろいろなお菓子やお茶を販売しています。

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陳列棚の上の方はチッペンディール風の本箱を模したモニュメントになっています。

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吹き抜けの上はガラス張りの屋根ですが、中国風の凝った模様が入っています。

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2階はレストランになっていますが、壁も屋根もはがされたかっての木造の架構をそのまま見せています。
僕たちはここのレストランで昼食を食べたのですが、中々おいしい料理でした。

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3階からレストランを見下ろすと、かっての屋根の架構が良く解ります。そこからかなりごつい鉄骨の柱梁が見えるのですが、黒く塗られて同化しているせいか、あまり気になりません。

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こんなにごつい鉄骨なんですが気にならないのが不思議です。

商業建築のせいもあるのでしょうが、昔の建築をそのまま復元することにこだわらずに元の建築の持っているノスタルジックな雰囲気を大事にして、大胆に作り直しているという感じです。
5年前に開業したそうですが、大変な人気で、大勢の観光客、地元の人たちで賑わっていました。
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台湾で見たもの―その5 緑光計画
今回、台湾のリノベーション例を見て歩いた中で、一番面白かったのが台中の緑光計画でした。台北で見た大規模な文創エリアと比べるとずうっと規模が小さく、手作り感の残るもので、そんなところにも親近感を抱いたせいかもしれません。

台中の繁華街にある台中市民広場から南に向かって公園のように伸びる「草悟道」というグリーンベルトの途中から西側に一歩入ったところにあります。
建物は元は水道局の宿舎だったそうですが、廃屋に近い状態になっているところをリノベーションして、レストラン、カフェ、美容院、手作りのお店などが入る施設となっています。

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道路側から見ると、すっかり緑に覆われて、昔のレンガの壁などを残しています。
たぶん、宿舎時代に道路との間が庭になっているところを鉄骨で増築してその二階部分を広いテラスと通路にしているのではないかと思いました。

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一歩中に入ると、その増築部分がところどころ吹き抜けになっていて、上から光が降り注ぎ、植物が育成できる環境にもなっているところが、なかなかうまい手法です。

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二階レベルのテラスからは各店舗にアプローチするようになっているのですが、テラスの幅に変化を持たせて、緑化面積も広いので地上にいるような感覚になります。

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もともとあった樹木を極力残しているのだと思いますが、階段の手すりもこのように木の幹を避けて作ってあるところもニクイですね。

古い建物に最小限の手を加えることで、昔の雰囲気をなるべく残すようにしているのと同時に、建設費を抑えて、家賃を低く抑えることで若い人達が借りやすくしているのではないかと思います。そのことがかえって、資金はないけれどやる気がある若者を集めて、とても魅力のある施設になっていると思いました。
Posted by kozyken
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