東京の近代建築見学会・続き
聖アンセルモ教会

二つ目に見たのは、目黒にある、建築家アントニン・レーモンドが1955年に設計した聖アンセルモ教会。
コンクリート打ち放しの折板型の柱と屋根版が規則正しく並べられた構造を作り出し、柱と柱の間のスリットから入る光が美しいインテリアを形作っています。
円の組み合わせが十字架を暗示させる祭壇のデザインがきれいです。

三つ目はこの日一番見たかった、川崎市宮前区にある、建築家山田守の設計で1957年に完成した長沢浄水場です。
去年ある雑誌で見かけた一枚の写真で、この浄水場を知りぜひ見たいと思っていました。それまでは、山田守と言うと東京武道館を設計した建築家と言うぐらいの知識しかなく、あまり興味を持っていなかったのですが、この写真ですっかり考えを改めさせられました。

長沢浄水場本館

メインの部分は事務室のある本館と濾過場と言われるガラス張りの細長い建物からなっています。全体にマッシュルームコラムと呼ばれる、上の方が広がって床スラブと一体に繋がって行く、ユニークな構造になっています。
本館のカーテンウオールは新しいものに取り換えられていました。元はもっと割り付けがすっきりしていて、全面透明で中のマッシュルームコラムが見えていたのはずなのですが、ちょっと残念です。

ろ過池操作廊

この建物の一番の見どころは、本館の右に細長く伸びる、ろ過池の操作廊と呼ばれる部分です。文字通りここは水をろ過するところですが、北側と南側にあるろ過池の真ん中を、ろ過池を操作、監視するための廊下が110mの長さで続いています。

白いマッシュルームコラムと黒いカーテンウオール

両脇が黒いサッシのカーテンウオールに透明ガラスが嵌め込まれており、真ん中に真っ白な二列のマッシュルームコラムが規則正しく続いています。
ろ過装置を操作するというだけの空間が、なぜこんなに美しいのか不思議な気持ちがします。建設当時は、この柱も、天井も、コンクリートの打ち放しだったようですが、僕はこの白い空間の方が良いように思いました。

操作廊東端

東の端部、外の部分に、コンクリート打ち放しの建設当時のままのマッシュルームコラムを見ることが出来ます。
カーテンウオールの角をアールで納めたり、端部が片持ちで柱からせり出していたり、床や屋根のスラブが薄くスッキリと納まっていたりと、隅から隅までデザインが考え抜かれていることが、この部分で良く解ります。

この日は、浄水場の方がお二人付き添って下さり、浄水場の設備についても詳しく説明していただき、それについてもとても勉強になりました。
Posted by kozyken
category:建築
comment(0)    trackback(0)

東京の近代建築見学会
僕が学生時代にお世話になった先生に、佐々木宏先生と言う建築の歴史の先生がいます。
去年から1年間、隔月で計6回、先生をお招きして近代建築の講義をしてもらうという企画に参加していました。
80を超えても、全く記憶力の衰えていない先生の講義は、今まで僕の知らなかった歴史や人名がどんどん飛び出す素晴らしいものでした。
毎回刺激的な講義だったので、僕は6回とも参加しました。それも8月で終わってしまったのですが、番外編として、先生に選んでもらった東京の近代建築を見学するという会が昨日あり、参加してきました。

エントランス

最初に行ったのは、品川の御殿山にある原美術館。ここは、元は個人邸だったところを、現代アートの美術館にしたもの。原設計は国立博物館本館や、銀座の和光ビルを設計した建築家、渡辺仁で、1938年に出来ています。
僕は昔からこの建物が好きで、今までにも何回か訪れています。室内は廊下も展示室もアールを描いて面白いプランなのですが、この日は内部は撮影禁止で、エントランスと庭園からの写真しか取れませんでした。

庭園側からの外観

庭園側から見ると75年前の建物とは思えないほどモダンで、凝ったファサードをしています。手前の黒い部分はレストランとして後から増築されたところですが、全体に白いモザイクタイルが貼られています。ゆっくりアールを描く壁面に、円柱が壁の中に隠れたり表に出てきたりと形態的な操作が行われて、その間に開けられた窓の割り付けもきれいです。
右側に階段室があるのですが、ここのプランが繭型をしているのもユニークでガラスブロックを嵌め込んだポツ窓もデザイン的に効いています。

建物は本当に素晴らしいのですが、開催中の、森村泰昌の「レンブラントの部屋、再び」もユニークで、楽しい、展覧会でした。

この後もう二つの建物を見学したのですが、それは次回に報告します。
Posted by kozyken
category:建築
comment(0)    trackback(0)

逗子の家 一年点検
昨日は逗子の家の一年点検に行って来ました。

階段踊り場の本箱

竣工一年目で、問題点が出ていないかどうか、工事を担当した工務店の監督さんと一緒に家の内外を点検して行きます。
検査の結果、石膏ボードに水性ペイント仕上げの居間の天井が、ボードの継ぎ目の所で細いヒビが入っていたことと、外構で木製の門扉が強風であおられて、板が一枚割れていたのが主な指摘事項でした。
天井はひび割れをパテで直して、ペンキの塗り直し、門扉はその時の板が工務店にまだ在庫していたので貼り直すことにしました。

春に一度お伺いして、一冬過ごした感想を聞いているのですが、その後夏の暑さがどうだったのか気になっているところでした。
この家では、屋根の熱を床下に蓄えて、暖房を行うパッシブソーラーシステムを導入しています。夏の期間、これで冷房は出来ませんが、室内の循環運転を行うことと、夜間、屋根面の放射冷却で外気温より少し低いぐらいの室温にする機能があります。
お話によると、暑い日でもエアコンを一台だけ28度設定で回して、ソーラーシステムを循環運転しておけば、家中快適に過ごせますということでした。
一年を通して、温度変化が少なく快適に生活が出来ましたと、おっしゃっていました。
これは建物本体の断熱性能が高いことも寄与しているのだと思います。
女の子二人の子供スペースを区切らずに広い空間としていたところも、少しずつ二人の領域が出来つつあるようです。
この様に部屋がオープンでも、室温がどこでも一定になるところも、このシステムの良いところです。大きな吹抜けがあることも、暖房の時の問題になることもありません。
子供スペース

キッチンでコーヒーをいただきながら
Posted by kozyken
category:住宅
comment(0)    trackback(0)

無垢の博物館
無垢の博物館

トルコの作家、オルハン・パムクの「無垢の博物館」を読みました。

1970年代のイスタンブールを舞台に、婚約式を控えた裕福な家の若者、ケマルが主人公です。彼は偶然町で遠縁の美しい女性、フュスンに出会い、たちまち恋に落ちてしまいます。
結局、婚約した女性とはうまくゆかず、求めるフュスンはすでに結婚してしまい、かなわぬ愛に悩みながら、彼は親戚の男としてフュスンの家に8年間通い続けるのです。
その間に彼は、フュスンにまつわるあらゆるものをコレクションし始めます。
愛が破局を迎えた後に、彼はこれらのコレクションを展示する博物館を作ります。

これは、純粋な愛を求め続けた男の物語であると同時に、愛という目に見えないものを、ものに置き換える話のようにも読むことが出来ます。膨大な数に上る、愛の思い出となる品々が本の中で、その形、におい、手触りが克明に描かれています。
最後の方で、世界中の博物館をめぐるケマルは、博物館とは時間を空間に置き換える場所だと語ります。そうして彼は、8年間という愛と苦悩の時間を、博物館という空間に置き換えることを思いつくわけです。

オルハン・パムクは実際にこの博物館をイスタンブールの街の中に作って公開しているそうです。
去年そのことを新聞で読んでいたことを後から思い出したのですが、残念ながら今回のイスタンブール行きではすっかり忘れていました。もっとも先にこの本を読んでいなければ、展示してあるものの意味が解らなかったと思いますが。

物語の舞台となるのは、イスタンブールの新市街と言われるところがほとんどなのですが、僕の今回の旅行ではこの新市街に行かなかったこともちょっと悔やまれます。
本を読み終わって、もう一度イスタンブールへ行きたくなりました。
Posted by kozyken
category:
comment(0)    trackback(0)

ベンジャミン・ムーア取材
今、改訂版作業中の建材関係の本の取材で青山にある、アメリカの塗料メーカー、ベンジャミン・ムーアのフラグショップへ取材に行って来ました。

ベンジャミン・ムーアは、主に住宅の壁や天井に塗る水性塗料を扱っているのですが、その品質に優れた点があるために、僕の事務所では10年ほど前から標準仕様として使っています。
今回の本の巻頭特集では、建て主が自分で施工、又はメンテナンスが出来る建材を扱うことにしています。アメリカでは住んでいる人が自分で自分の家の壁を塗り替える伝統があるということで、取材に伺ってみました。

取材風景

このショップでは、塗装の技術的なことから、色の選び方、カラーコーディネーションまで相談にのっているということです。
ベンジャミン・ムーアの塗料は品質が高いことと、その色数が多いことに特徴があります。
実に3600色の色見本がそろっています。

3600色の色サンプル

面白いのは、お店で色が決まるとその場で塗料の基材と顔料を調合して売ってくれることです。
色番号をパソコンに入力すると、デジタルデータに従って、この機械が基材に13色の顔料を調合して配合します。

調合の機械

そしてこの機械で6分間攪拌すると出来上がり、色を決めてから15分ぐらいで製品が出来上がるということです。

攪拌機

出来上がった製品を。色サンプルと確認します。

色の確認

ベンジャミン・ムーアでは、自分たちで好きなように自分の部屋を塗装する文化を作りたいと話していました。
ただそのことには賛成なのですが、あのカラフルなアメリカのインテリアを日本の住宅に持ち込むことには少し違和感を覚えたことも確かです。
僕が考える日本のインテリアはやはり白い壁と、木の肌で出来ていると思うので、今まで長年ベンジャミン・ムーアの塗料を使ってきて、使った色はほとんどいつも白でした。
時々少し派手な色を使ってみたいと思うことはあるのですが。
Posted by kozyken
category:建築
comment(0)    trackback(0)

サンタ・マリア・デッラ・パーチェの回廊
今回のローマ行きで一番見たかったのが、このサンタ・マリア・デッラ・パーチェの回廊です。

16世紀の初頭に盛期ルネッサンスの巨匠、ドナート・ブラマンテによって設計されたものです。2年ほど前に知り合いの竹内裕二さんが出版された「イタリア修道院の回廊空間」と言う本を読んで、その中にあったこの建物の写真にすっかり魅了されてしまいました。
と言う訳で、ローマに着いた次の日に真っ先にここへ行きました。

回廊から見る中庭

中庭に入った瞬間、思わずため息をついてしまいました。写真で想像していた以上に素晴らしい空間です。
控えめな意匠で、落ち着いた静謐な空間ですが、これ以上足すことも引くこともできないほど、完璧な比例関係の上に成り立っているように見えます。

正方形の中庭空間

中庭の大きさは12m角ほどの正方形で回廊の幅も3mほど、回廊の天井の交差ヴォールトが美しい。

回廊

1階の柱は、角柱がアーチを支える形ですが、面白いのはその中にもう一つ意匠的な付け柱があって、イオニア式の柱頭がマグサを支えるようになっているところです。
白っぽい石の柱に対して、アーチの壁の部分は少し木色味がかって、テクスチャーも柱より細かく仕上がっています。
1階の柱詳細

2階へ目を移すと、2階の柱はアーチではなく、より古典的なマグサを支える形を取っており、柱頭はコリント式に代わります。さらに1階と同じ柱間の角柱の間に、より細い円柱を入れて、柱間を2つに分割しています。

2階の柱詳細

最初に見た印象が、シンプルで美しいと思ったのが、よく見て行くと実に繊細で巧妙な柱の扱い方をしていることが解ります。

2階回廊のカフェ

2階の回廊は、現在はカフェになっていて、かっては修道士が瞑想の合間に座ったであろう柱の間の腰掛が、お茶を飲むためのイスに変わっていました。
それにしても、ここでいつでも本を読んだり、勉強をしたり出来る人達がうらやましく思いました。
Posted by kozyken
category:未分類
comment(0)    trackback(0)

サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ
ローマで好きな建築を上げろと言われれば、まず、このサン・カルロ教会を筆頭にあげたいと思います。

外観

クワトロ・フォンターネ通りと、クイリナーレ通りの角にあり、それぞれの角の建物に小さな泉があるので、クワトロ・フォンターネのサン・カルロ教会と呼ばれています。
バロックの巨匠、フランチェスコ・ボッロミーニが17世紀の初めに作ったものです。知らなければその前を通り過ぎてしまうほど小さな建物ですが、珠玉の名作と言えます。

バロックの語源はゆがんだ真珠だといわれています。ルネッサンスの建築が真円だとすれば、このサン・カルロ教会はその名の通り楕円形をモチーフにしています。
外観は、凹面と凸面を組み合わせたうねる様な壁面に特徴があり、これもルネッサンスの整った壁面とはずいぶん異なった、動きのある表現と言えます。

内部に入ると、自然と視線は上を向いて、楕円形の美しいクーポラに向かいます。実際には楕円ではなく、二つの半円をより大きな円弧がつなぐような形をしていますが、頂部から入ってくる光が、十字形をモチーフにした複雑な格間を照らし出して、一段下部の暗さとの対比が見る者の目をくぎ付けにします。

天井のクーポラ

今回は時間に余裕があったので、椅子に座ってゆっくりとみていると、そのクーポラの美しさだけでなく、その下部へのつながりも実に精巧に考えられていることに気が付きます。
クーポラの下は、やはり楕円形のペンディンティブで支えられ、その下に回るエンタブラチュアは凹面と直線で構成されています。そのエンタブラチュアを支えるコリント式の柱も実に複雑に配置されています。
ほんとに小さな空間ですが、ボッロミーニは様々な工夫を凝らしてまさに珠玉の空間を作り上げたと言えます。

クーポラから下部へかけての精密な造形構成

柱間を飾る、貝をモチーフにした装飾も実に美しいものです。
貝のモチーフ

今まで気が付かなかったのですが、地下にもこのような礼拝堂があり、ボッロミーニ自身がここに埋葬されているそうです。
地下礼拝堂

礼拝堂の横にはこれまた小さな回廊に囲まれた中庭があります。
礼拝堂の楕円形に対応して、こちらは長方形の四隅を45度にカットしたようなプランをしています。ドリス式の柱頭を持つ柱は、2本一組になって、隅のところでは45度に振るという、他に例を見ないような変わった構成をしています。
回廊を持つ中庭

回廊は二階にも周っていて、一つ一つの構成要素はシンプルで美しいものです。
回廊1階と2階

上を見上げると、そのプランのままに青空が切り取られていました。
中庭の見上げ
Posted by kozyken
category:建築
comment(0)    trackback(0)

ホームページ更新「ののの家」掲載しました
ののの家
先日、竣工してから2か月ほど経った、「ののの家」の写真を撮らせていただきました。

家具が揃い、本箱もきれいに本が分類されて、とても良い感じになっていました。
住宅はやはり竣工した当初より、人が住んで、住み手の個性が感じられるようになって来てからの方がリアリティーが感じられて、写真を撮るのには良いですね。

と言う訳で、その写真を整理して、私のホームページの作品集に掲載しました。
よろしければご覧になっていただければ幸いです。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~kekojima/
Posted by kozyken
category:住宅
comment(0)    trackback(0)

ローマの町の魅力
今回の旅で、ローマにいたのは3日間だけでしたが、毎日よく歩きました。
ローマの町は何処を歩いていても楽しいので、ついついどこまでも歩いて行ってしまいます。

その魅力は何処から来るのか、短い滞在の間に僕なりに考えてみました。
一つは、建物のファサードが一つの様式で統一されていること。その様式とはルネッサンス様式になるわけですが、今ある建物の内本当にルネッサンスの時代から建っているものはほんの一部でしょう。多分ほとんどは19世紀以降に建てられたのではないかと思いますが、後から建てられた建物も同じ様式に倣っているので、統一感があるのだと思います。
ローマの道

とはいってもよく見ると、色も高さも実際にはまちまちですが、様式として統一されているということです。窓を見ると形も形式も全て同じなことが解ります。
建物のファサード

もう一つは、裏町に入ると道の幅が必ずしも一定ではなく、道の広がったところにはカフェやレストランがテーブルを出したりしています。
道が黒いピンコロ石で舗装されているのは、何処へ行っても同じで、これも街の雰囲気を作る大事な要素になっています。
黒いピンコロ石で舗装された道路

そして夜ともなれば、裏町の道路には思い思いにレストランのテーブルが出て、食事をする人、散歩を楽しむ人でにぎわいます。
そぞろ歩きの人たちでにぎわう裏町

僕の泊まったホテルの前は小さな広場になっていて、毎晩、夜遅くまで大勢の人でにぎわっていました。ここに面した酒屋さんは大繁盛で、皆ここで、ワインやビールを買ってきて、中心にある噴水に腰かけたり、立ったままで夜遅くまで語り明かしています。
ほんとに生活をたのしんでいるなあ~、と言う感じがします。
Piazza Dell Madonna dei Monti

この広場を図面化してみるとこの様になります。30m角ほどの小さな広場ですが、5方向から道路が入り込んできて、どの道路もここへは下ってくる、つまりスリバチの底のような位置にあります。そして噴水があり、レストランが広場に面してテーブルを出しているのが、人が集まりやすい要因なのでしょう。
広場の平面図

この正面のベージュ色の建物が僕が泊まっていたところで、ホテルと言うよりも修道院を改修して宿泊施設にしたような処でした。
朝の広場
Posted by kozyken
category:日記
comment(0)    trackback(0)

| HOME |