大いなる眠り
大いなる眠り

レイモンドチャンドラーの「大いなる眠り」(村上春樹訳)を読みました。
フィリップ・マーロウが活躍する探偵小説です。

この前に、ピアニストのヴァレリー・アファナシェフのCDと一緒に買った「ピアニストのノート」という本を読んでいたのですが、これがとても読みにくい本で、めったに読みかけで放り出すことのない僕もついに途中で挫折してしまいました。
もっと楽しい本が読みたいということで、読み始めたのが「大いなる眠り」。

これはチャンドラーの長編第一作目ということですが、すごく面白くて、かなりの長編をいっきに読んでしまいました。
マーロウは、シャーロック・ホームズや、ミスマープルのように緻密に論理を重ねていって事件を解決するといったタイプではなく、危険を顧みず現場に乗り込んで行って、その空気を感じ、感覚で推理してゆくというタイプの探偵ですが、そこがまた大きな魅力になっています。
いくつもの殺人事件と多くの登場人物が現れ、複雑に事件が絡み合って行き、読者の頭もこんがらがってしまうところもあるのですが、この本はそんなことは気にせずに一気に読んで、ストーリーのライブ感を楽しむべきなのかもしれません。

話の中で重要なプロットになる殺人を犯した男が、翌日死体で発見されるくだりがあるのですが、その犯人が解らないだけでなく、その事件そのものが読んでいる中で事件として扱われていないところがあります。僕の読み落としかと思って何度か読み返してみたのですが、結局解りませんでした。あとがきを読むと、僕の読み落としではなく、実際書かれていないらしい。この本の映画化にあたって、監督のハワード・ホークスが電報でチャンドラーにあの犯人は誰なんだと問い合わせたところ、「私は知らない」と答えたというエピソードがあるそうです。

村上春樹の翻訳も、そんなこの本のライブ感を見事に写し取っています。
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法匠セミナー―いきいきとした場所のつくり方―
先週の金曜日に、法政大学建築同窓会の主催で、建築学科准教授の赤松佳珠子さんに講師をお願いして「いきいきとした場所のつくり方」というテーマでセミナーを行いました。
今年から、同窓会組織の中に「文化部」グループを作って、セミナーや見学会の企画を行っているのですが、僕もその一員で、この日には進行係も担当しました。

赤松佳珠子さんのセミナー

赤松さんはシーラカンスという設計事務所のパートナーで、多くの作品で賞を受賞するなど今一番活躍している女性建築家の一人です。
この日は去年建築学会賞を受賞した熊本の宇土市立小学校や、最近竣工した立川の小学校、現在工事中の流山市小学中学統合校など、学校建築を中心に話をしてもらいました。
最初にシーラカンスの最近の設計に対する考え方を表す、大きな矢印と小さな矢印の群れ、という話がとても興味を引きます。20世紀の建築は、合理性、機能性という大きな矢印を目指しているのに対して、21世紀の建築はもっと小さな矢印が複雑に思い思いの方向をむかっているというものです。その小さな矢印は、光の強弱であったり、風のながれであったり、人の活動であったり、構造であったり、様々なものがあるわけですが、それらが自由にまたは関連し合って空間を作ってゆくと考えます。実際にはコンピューターの発達によって、そのような小さな矢印にあたるものがシュミレーションできるようになってきたということもあります。たとえばある地方で、ある季節の風がどの方向から吹いてくるかなどということは今では簡単にシュミレーションが出来ます。

そのような前提のもとに、熊本の宇土小学校をスライドを見せてもらいながら説明を聞きました。今までの学校のように廊下の片側に教室が並んでいるというプランではなく、全体が流れるように一つの空間になっていて、好きなところで授業が行われ、行事が行われるいわゆるオープンスクールの形式です。いくつもの中庭があり、建物の周囲は建具をすべて解放すれば、内部と外部の境目もはっきりしなくなるという開放的なプランです。
そこでは子供たちが実に生き生きと活動しているのが印象的でした。

僕が学生だった60年代の終わりごろから、モダニズムが行き詰まってきて、全体から部分へという方向ではなく、部分から始まってその蓄積として全体が成り立つというような思考方法が大事なのではないかといわれ始めたのですが、実際にそこから創作へつながる道筋がなかなか見つかりませんでした。
この「小さな矢印の群れ」という話の中にはその当時の部分と全体の関係という問題とよく似たところがありますが、それを実作品の中でみごとに展開しているところが大変興味を惹かれました。
シーラカンスの仕事が、最近多くのコンペで優勝したり、数々の賞を獲得していることも納得がゆきます。
この日はとても刺激的な話を聞くことが出来、有意義なセミナーになったことで、企画をした側としてもとても良い経験になりました。

赤松さんを囲んで懇親会
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バロック・コンサート
開演前の舞台風景

先日の日曜日は、久しぶりに浜離宮朝日ホールで行われたコンサートに行って来ました。

スイスから来日した、イル・プロフォンドと言うバロックアンサンブルのコンサートでした。実はこのメンバーに、僕の大学の先輩に当たる朝吹さんの娘さん、朝吹園子さんが加わっているということで、朝吹さんから案内をいただいたものです。
楽器は全て古楽器を使っていて、テオルボと言う、リュートに似た珍しい楽器も入っていました。そして器楽に加えて、カウンターテナーの歌が入るという構成です。
カウンターテナーの歌声は初めて聞きましたが、男性とは思えない高い透き通った歌声でこの日のテーマ「17世紀イタリア~愛と悲哀のカンタータ」にピッタリでした。

普段あまり聞かないバロック音楽を、しかも古楽器で聞くと、とても優雅なゆったりした気分になり、日ごろのあわただしい生活をつかの間忘れることのできる、素敵なひと時でした。

この会は、日本とスイスの国交樹立150周年と言う名目もあって、会場には皇后陛下もお見えになっていました。
丁度、休憩時間を挟んで後半のプログラムが始まる前に、2階の席にお見えになって、一階の席から拍手をする聴衆に向かって手を振っておられました。

2階席の皇后さま

普段は皇室のことに特別な関心があるわけではありませんが、このように自然とみんなが拍手をして、手を振って応えられている風景は、中々良いものでした。
Posted by kozyken
category:音楽
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