スラップスティック
スラップスティック


カート・ヴォネガットの「スラップスティック」を読みました。

化石燃料の枯渇、フロンガス、伝染性の疫病の蔓延など等で、瀕死の状態にある地球で、アメリカ合衆国最後の大統領になった男の話です。
こう書くと、いかにも正統的SFの題材のようですが、そこはヴォネガットのことですから、ひとひねりもふたひねりもあって、アイロニーに満ちた文明批判になっています。

主人公は大統領選で人工的拡大家族と言う政策を公約します。人工的拡大家族とは、政府が任意に1万人単位ぐらいで選んだ人々で新たな人工的な親戚関係を作り、ひと家族にひとつのミドルネームを与えると言うものです。ミドルネームは動物や植物、鉱物から取られたものを無作為に付けられます。パンダ家だったり、ピーナッツ家だったり、黄水仙家(これが大統領)だったり、何でも良い訳ですが。
大統領選のキャッチコピーは「もう孤独じゃない!」
人々は、大勢の親戚縁者を持って、お互いに助け合い、孤独から抜け出せると言うわけです。

ヴォネガットは1970年にナイジェリアとの戦争で降伏寸前のビアフラ共和国に招待されて行っています。ビアフラは長年の戦争で悲惨な状態にあり、虐殺と餓死が日常的になっていました。
そんな中で、なぜ何年もの間、ビアフラの人たちは希望を持って生きてこられたのか?ヴォネガットはある将軍との会話で理解できたと言います。
ビアフラでは、ひとつの家族は100人を超える単位で生活して、お互いに助け合い、問題を家族全員で相談して決めてゆくという習慣があるそうです。そのためにどんな困難に陥っても、決して絶望することなく、みんなで解決に向かって希望をつないでゆくのだそうです。

ヴォネガットは、この話に感動して、拡大家族と言うテーマで、この小説を書いたわけです。
ヴォネガットがこの小説を書いた時代のアメリカでは、すでに人々の精神的孤立が、大きな社会問題になっていたのですが、その傾向は今でも良くなるどころか、ますます進んできているような気がします。
Posted by kozyken
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