「母なる夜」-カート・ボネガット
母なる夜

カート・ボネガットの「母なる夜」を読みました。

ボネガットの作品には、お気に入りのものがいくつもありますが、これはまた、特別興味深い作品です。

主人公のハワード・キャンベルは、ナチのプロパガンダ放送の作者兼、アナウンサーでありながら、アメリカのスパイであるという役柄であり、物語の中で、複雑な性格を見せます。
戦後潜伏中の同じアパートに住む画家で実はソ連のスパイと言う人物、彼の亡くなった妻と瓜二つの妹、極右の白人至上主義者など、どの登場人物も一筋縄では行かない、性格を見せて魅力的です。

物語の冒頭に、人は見かけの中にその人の本質が出るものだから、どのような人物に見せるかを十分に考えなくてはいけない、と言うようなことが語られます。
ハワードは、見かけはナチのシンパでありながら、実は反ファシスト。でも本当はどうなんだろうと、自分でも解らなくなり、最後には自首して、イスラエルの刑務所に入ってしまいます。
人間について、深く洞察している作品なのに、文章は軽く洒脱、ユーモアと辛らつなアイロニーに満ちているので、決して深刻な印象を与えないのが、いつものボネガット流。

あるボネガットの作品の中で、登場人物がこう語るところがあります。「人間について知りたければ、カラマーゾフの兄弟を読め。そこには人間についての全てが語られている」
これに倣えば、人間について知りたければ「母なる夜」を読め、といえそうです。

「母なる夜」は現代の「カラマーゾフの兄弟」といえるのかもしれません。
Posted by kozyken
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