「サラサーテの盤」-内田百
サラサーテの盤

内田百集成4「サラサーテの盤」(ちくま文庫)を読みました。

内田百は前から興味があって少しずつ読んでいたのですが、この本で百の文章のすごさに圧倒された思いがします。

表題の「サラサーテの盤」を含む、16の短編が収録されています。「サラサーテの盤」は、鈴木清順の映画「チゴイネルワイゼン」の原作です。チゴイネルワイゼンは僕の大好きな映画ですが、原作は映画とまた違った、独特の凄みがあります。
ストーリーの面白さと言う次元ではなく、文章の凄みと言ったらよいのでしょうか?こんな文章が書けるのは内田百をおいてはいないのではないかとさえ思ってします。シンプルで、無駄がなく、融通無碍でありながら、文章に独特の硬さがあり、読むものの頭の中にひとつひとつの言葉がしみ込んでゆきます。

どの話も良いのですが、僕が特に気に入ったのは、大学を退職してすぐに妻をなくした男の、身の回り出来事を描いた「南山寿」と、女学校でお琴を教えている検校と弟子の女性の淡い恋を描いた「柳検校の小閑」です。
どの話も、ごく普通の日常を描いているようでありながら、少しずつその日常がずれて、読むものを不安にします。かといって完全に異次元の世界に入るわけではなく、読むものは、日常と非日常の稜線の上を危うい足取りで歩いている気分にさせられるのです。
言ってみれば、非常にシュールな世界なのですが、それが興味本位にならないのは、洗練された文章の力だと思えます。

この内田百集成は、全部で24巻あるので、これから少しずつ読んでゆくのが楽しみです。
Posted by kozyken
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