ロコス亭
ロコス亭

ロコス亭―奇人たちの情景(フェリッペ・アルファウ著 創元ライブラリー)という小説を読みました。

著者のフェリッペ・アルファウとはあまり聞いたことのない名前ですが、スペイン生まれで若い時にアメリカに移住して、この作品以外に長編小説がもう一つと、詩集を出しているだけで、日本ではもちろん、本国アメリカでもあまり知られていない作家のようです。

短編集の形をとってはいますが、それぞれの話に繋がりがあり、全体で一つの作品と言ってよいと思います。

最初に歴史に取り残された町、トレドのロコス亭に集まる奇人たちの紹介がありますが、話の舞台はほとんどマドリードです。
奇妙な人たちの、奇妙な話が次々と出てきますが、読者が迷うのは、登場人物がある話では主人公であり、別の話ではわき役だったり、ほんのチョイ役だったりして、しかも全く同じ人間ではなかったりするところがあるのです。
つまり、登場人物たちが映画の俳優のように、自分が出ている章によって、性格を変えたり役割を変えたりするのです。これが読んでいてややっこしいのですが、仕掛けがわかってくると、だれがどんな役なのか、影の方にさりげなく出ている人間に気が付いたり、探偵小説を読むような楽しみもあります。

それにしても、ストーリーは奇妙でいかにもスペイン的。強烈な太陽に照らされて、深い影が存在するといった風景が立ち上がってきます。

今年読んだ本の中では、内田百の「サラサーテの盤」に次いで、印象に残る本です。
現実と虚構の間をさまようような感覚は、共通するところがあるようにも思えます。

巻末にある、90近くになって養老院に住んでいる著者へのインタビューが、いかにもこの本を書きそうな偏屈なお爺さんの話として、面白かったことも記しておきます。
Posted by kozyken
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