我等、同じ船に乗り
我等、同じ船に乗り

これは桐野夏生による、日本文学のアンソロジーです。
普段僕があまり読まない本ですが、かみさんから借りて読みました。
我が家では、大体夫婦で同じ本を読むことが多く、僕が読み終わった本をかみさんが読む、と言うパターンが多いのだけれど、今回は逆。この前に僕が澁澤龍彦のエッセイを読んでいたら、丁度彼女が読んでいるこの本の中にも澁澤龍彦が入っているというので、借りたものです。

入っている作家は、島尾敏雄、島尾ミホ、松本清張、林芙美子、江戸川乱歩、菊池寛、太宰治、澁澤龍彦、坂口安吾、谷崎潤一郎。僕は桐野夏生の小説は読んだことが無いけれど、こうやって見ると、文学の好みと言うか傾向が良く解ります。

どの作品も興味深く読んだのですが、一番衝撃的だったのは島尾ミホの「その夜」でした。
終戦間際の南の島に駐留していた特攻隊の隊長と恋に落ちた島の娘の話です。
これは島尾ミホの実際の体験を下敷きにしているようで、戦後、その特攻隊長だった島尾敏雄とミホは結婚しています。

終戦の2日前(当然2日後に終戦になるとは、誰も知らないわけですが)、いよいよ特攻隊が攻撃に出るという情報を知った娘が、最後に彼に会うために、身を清め懐に自決の為の短刀を忍ばせて、特攻隊の基地へ出かけます。基地の見張りに見つかれば、有無を言わせず銃撃されるのは目に見えているのですが、彼女は見つからないように、海岸伝いに岩陰に身を寄せながら匍匐して進んでゆきます。闇夜の海辺を岩で傷だらけになり、ずぶぬれになりながら彼に会いに行きます。
二人とも明日の命は無い、と言う状況の中で必死な女性の思いが胸を打ちます。死ぬのは怖くないけれど、彼と一緒に生きたいという思いがひしひしと文章の間から伝わってきます。これは短編ならではのだいご味と言えますが、言葉を超えてその思いの一途さが体に入ってくるような小説でした。

もう一つ澁澤龍彦の「眠り姫」も気に入った一篇です。
澁澤龍彦は若いころに、エッセイや美術評論をよく読んだのですが、小説を読むのは初めてです。この作品が出た時にちょっと評判になったので、題名は覚えていましたが澁澤らしいテーマで面白く読みました。特に最後の水のイメージが何ともいえず良いと思いました。
Posted by kozyken
category:
comment(0)    trackback(0)

comment
comment posting














 

trackback URL
http://bwv828.blog31.fc2.com/tb.php/685-48033add
trackback