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秋野不矩美術館
土曜日は、大学の後輩が設計した、ある企業の研究施設の完成見学会があり、浜松まで行ってきました。
浜松駅からバスで40分ぐらいの天竜川を見下ろす丘の上に建つその建物は、最先端の研究施設ですが、自然環境を取り入れた素晴らしい建物でした。
ここで、その建築について書きたいところなのですが、何らかの理由があって、10月8日過ぎまでは、写真を掲載しないようにと言われているので、これについては後日書きたいと思っています。

午前中にその建物を見学した後、午後から駅をはさんで反対側の小高い山の上にある、秋野不矩美術館へ行きました。
この建物は、建築史家の藤森照信さんが地元出身の秋野不矩の美術館として設計したものです。

アプローチの途中から見上げる
美術館のアプローチの坂道を大きく迂回しながら登ってゆくと、戦国時代の山城のような姿が見えてきます。

正面外観
建物は、長方形のプランの両端に正方形の方形屋根のマッスが45度角度を振って付いている形になっています。左側がエントランスホール、右側がメインの展示室です。
使っている材料が、壁は荒らしいテクスチャーの土塗り壁と、木の板、そして屋根が天然スレート。藤森さんの建築は工業製品を使わず素朴な材料で作るところに特徴がありますが、よく見るとスレート屋根の下にスチールの下地が見えたり、土塗り壁もコンクリートの構造の上に塗ったものである事が解ります。

壁から飛び出す雨樋
これは雨樋。木を刳り抜いて作っているところが、いかにも藤森風。

エントランスホール
中に入ると、床が藁スサを入れた三和土風、壁、天井はやはり藁スサを入れた白い漆喰塗りです。そして柱や梁は、手斧で削り取ったような不整形な形をしていて、親しみやすい柔らかな空間になっています。

照明
照明も、壁から木の枝をそのまま突き出して吊るしています。

階段
階段も三和土に風の床がそのまま階段になった感じです。

実は僕が一番気に入ったのは、奥にある45度に振った正方形プランの展示室なのですが、撮影禁止でした。
シンプルな正方形プランに、屋根と同じ形の逆ピラミッドの高い天井が載り、壁と天井は白いスサの入った漆喰、床は大判の大理石が間を漆喰で埋めながら並べれられています。
部屋の広さと、天井の高さのスケール感が良く、使っている材料もほとんど白なのですが、工業製品にないテクスチャーがあります。建築は、材料の選定とスケール感が良いとそれだけで良い空間になるという見本のようです。

僕は20年ほど前、藤森照信のデビュー作、「神長官守矢資料館」を見に行ったことがあるのですが、その時は建物の際どさ、と言うかいかにもフェイクなところが、どうしてもなじめませんでした。この建物にも、その感じは残っているのですが、ずっと洗練されていて、こういう建築もいいなと、思わせるものがあります。

もう一つ、ここに展示されている秋野不矩の絵と、この建物が良く合っています。秋野不矩の絵は、近代的な美術館で鑑賞するよりもここで見る方がずっと落ち着いて、細部まで鑑賞できるような気がします。
Posted by kozyken
category:建築
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