忘れられた日本人
忘れられた日本人

宮本常一の「忘れられた日本人」(岩波文庫)は、だいぶ前に読んでいるのですが、「ののの家」のお施主さんとの話の中に出てきたので、本棚の中から探し出してきて読み返してみました。

昭和30年ごろに、宮本常一が日本各地の辺境と言ってもよい貧しい村々を歩き、土地の古老から昔の話を聞くという形でまとめられた本です。
今から60年ほども前の昭和30年ごろに80近い老人の話を聞くわけですから、話は明治の初めから昭和に至る、地方の小さな村の歴史が語られています。現在の我々には想像もつかない興味深い話がいたるところにちりばめられています。

ほんの100年ほど前の日本人の暮らしがどんなものであったのか、現代のわれわれには想像もつかないところがたくさんあります。
暮らしが貧しく、食べるものが粗末であるとか、住む家が今とは比べ物にならないほど質素であったことなどはまだ多少は理解できますが、僕が一番考えさせられたのは、娯楽が本当に限られていたことでした。
テレビやラジオが無いのは当然ですが、田舎では映画も芝居もない。農民たちは朝暗いうちから農作業に出て、夜暗くなるまで働いているので、普段はまったく遊ぶということが無いわけです。
その中で印象に残ったのは田植え歌の話でした。田植えは女の仕事だそうですが、つらい仕事を、歌を歌ったり、たわいのない話をすることで楽しみを見つけ出していたということです。田植え歌に限らず、日本の民謡の中にはそのような役割があったのですね。
そして祭りや、正月の行事などは本当に数少ないハレの空間であったことが想像に難くありません。

この本が書かれた昭和30年ごろまではそれでもまだゆっくりした変化だったものが、それから現在に至るまでは急激に社会環境が変わっています。僕の年代で読んでも、想像の難しい世界が、今の若者にはどう映るのか、ちょっと興味のあるところです。
Posted by kozyken
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