辻邦生の小説
辻邦生の小説、3冊

ここの所、辻邦生の小説を「西行花伝」「安土往還記」「回廊にて」と3冊続けて読みました。

「西行花伝」は平安末期、貴族の没落と武士の台頭そして平氏の繁栄から源氏の世へと目まぐるしく移り変わる世の中を歌の世界を通して見つめ続けた僧であり歌人であった西行法師の話です。
「安土往還記」は織田信長と言う徹底した合理主義者であり、当時の日本人には理解されにくい孤独な権力者を宣教師と共にジェノバから来た異邦人の目を通して描いたものです。
どちらも歴史小説と言うジャンルに入るのかもしれません。
「回廊にて」は、第一次大戦と第二次大戦のはざまで、過酷な人生を生きた女性の物語で、歴史小説ではありませんが、歴史という長い時間の中で、人間と時間の関係を扱っているという点ではやはり歴史がテーマと言っても良いように思えます。
そういえば、僕が今まで読んだ「嵯峨の明月記」「背教者ユリアヌス」「花の戴冠」などはどれもジャンルでいえば歴史小説に分類されるものかもしれませんが、では辻邦生と言う作家は歴史小説家なのか、と言うと少し違う気がするのです。

僕らが歴史小説と言うとすぐに思い浮かべる、司馬遼太郎や、塩野七海とはだいぶ作品の趣が異なります。司馬遼太郎や塩野七海の小説は誤解を恐れずに言えば大衆小説であり、辻邦生の作品は文学作品であると言えるのかもしれません。
どちらが良いということではなく、僕は司馬遼太郎も塩野七海も大フアンなので、そこから触発されるものも多分にあるのですが。
その違いは多分歴史の事象に対する関わり方にあるような気がします。司馬遼太郎も塩野七海もそこに登場する人物の心の中まで入り込んでいくのですが、その心の動きはあくまでもその時の歴史の事象との直接のかかわりの中で完結するのです。それに対して、辻邦生の小説の主人公は、その事象との関係の中で、個人的にも時間的にもさらに深いところへ、さらに遠いところへと落ち込んでゆくような気がします。

短い文章で、うまく表現しにくいもどかしさを感じるのですが、3冊の本を続けて読んでみて、そんなことを考えていました。
Posted by kozyken
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