火天の城
火天の城

前から読もう読もうと思っていた、「火天の城」(山本兼一)を読んでみました。

本が出た時にずいぶん評判になったし映画化もされたので、読まれたり映画を見た方も多いと思います。
織田信長に仕えて、安土城を建立した大工の棟梁の物語ですが、評判にたがわず面白い小説でした。
安土城は竣工して数年の後、本能寺の変の後に焼け落ちてしまったので正確な資料が残っていないようですが、小説では工事の過程が実に詳しく具体的に掛れていることに感心させられます。もちろんフィクションですから、小説家の想像力によるところが多いのでしょうが、相当に詳しく下調べをしたのではないかと思います。
出てくる大工や石工の棟梁の話はもちろん、材料となる木を切り出す木曽の杣の話なども興味をそそられる逸話がちりばめられて、いかにもさもありなんと思わせます。
職人たちの技術的なことばかりではなく、木や石を扱う職人の心の動きなども実に正確に描写されています。そういった丁寧なディテールの積み重ねが、この小説をフィクション以上のものにしているように思います。

途中から信長の命で、壁を厚く丈夫なものに変更するのですが、その重量で完成間近の建物に異変の起こるところが、この物語のクライマックスではないかと思います。
7層の天守を支えるために中心に尺5寸角、長さ8間の通し柱が3本あります。壁の重さで周辺の桁が下がり始め、通し柱はしっかりつぱっているので、床が傾き始め、余計な力のかかった梁のほぞが悲鳴を上げ始めます。このままでは城の倒壊につながりかねないという時に棟梁はどのような解決策を出すのか、手に汗を握る場面です。
棟梁の解決策は3本の通し柱を根元で12cmほど短く切り取るのですが、建物の重量のかかっている柱を3本同時に切るのは至難の業といえます。しかしその描写は高度に専門的な技術に裏打ちされています。

小説と言うものは、読む人によっていろいろなとらえ方があるものだと思います。
僕にとってこの小説は、歴史的な建築の技術にとって、実証できないものを小説家の想像力によって補うという意味でとても興味深いものでした。
Posted by kozyken
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