ゴースト・トレインは東の星へ
ゴースト・トレインは東の星へ

ポール・セローの「ゴースト・トレインは東の星へ」(西田英恵訳・講談社)を読みました。
これは1975年にセローが発表した「鉄道大バザール」の旅をほぼ30年の歳月を経て、60代になった彼が再びたどってみた旅行記です。
ロンドンを出発して、ユーラシア大陸を横断して日本へ、そしてシベリア鉄道でロンドンへ戻るという長大な工程を基本的には鉄道を利用して旅する大旅行です。

帯の部分に、イスタンブールでオルハン・パムクに会い、スリランカでアーサー・C・クラークに会い、東京では村上春樹と語り合うとあります。その部分も興味をそそられるのですが、なんといっても国から国へと国境を越えて、かれが見て感じること、そして30年前と今が、どこが変わりどこが変わっていないかということが興味深いところです。

30年前の旅では、ラオス、北ベトナムに入れなかった代わりに今回は、イラン、イラク、アフガニスタンを通れずに中央アジアに回っています。いつの時代にも世界にはどこかで紛争があるという事実。そして、彼の旅は一部の例外を除いて、貧困と生活を圧迫する政府に苦しむ人々の国を巡ってゆきます。
そんな中、僕が一番興味を感じたのは、東南アジア、ミャンマーから、タイ、マレーシア、シンガポール、ラオス、ヴェトナムを旅する部分でした。
日本は陸続きの国境線を持たないため、一本の線で国が変わるという実感を持ちにくいのですが、東南アジアのこの地域では、国境を超えることで生活も文化も政治も全く変わってしまいます。独裁政権で希望を失ったミャンマーの人々、ポルポト政権の虐殺からいまだに立ち直れず、恐怖の表情を消すことのできないラオスの国民、豊かで明るいタイ、かっての戦争に対してアメリカ人のセローにやさしく接して常に前向きなヴェトナムの人々。

彼は旅は娯楽の中で最も悲しい楽しみであり、世界は貧困と悪い政治に満ちており、荒廃を止める手段はないと書いています。しかし、旅で出会った多くの人がまた旅を続けることを手伝ってくれた、それこそが旅を続ける意味であるとも言っています。

表題のゴーストトレイン、幽霊とは、旅人はたまさかその国を訪れ、消えてしまう幽霊のようなものという意味でしょうか。
Posted by kozyken
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