「イスタンブール―思い出とこの町」
イスタンブール

オルハン・パムクの「イスタンブール」(和久井路子訳―藤原書店)を読みました。

オルハン・パムクはイスタンブールで生まれ、現在に至るまでこの町で暮らしていますが、子供時代から作家になる決心をした20歳までのこの町との関わり合いを描いたのがこの本です。
自分とこの町の関係だけでなく過去の作家たちがイスタンブールをいかに描いたか、19世紀にこの町に来た西洋の作家、画家たちがこの町をいかに描いたかを様々な角度から書いていますが、その根底に流れるのは憂愁の感覚だと言います。
19世紀にオスマントルコが崩壊して以来、町に、そして人々の心の中に流れている憂愁の感覚をトルコの言葉でヒュズンというそうですが、この言葉の響きがいかにもこの町の持つ独特な感覚を表しているように感じます。
この本の全体に素晴らしい街の写真がちりばめられています。その古いモノクロの写真が、ヒュズンとは何かを絶えず語りかけて来るようです。

パムクは子供のころから絵を描くことが好きで、将来は画家になることを夢見ていたそうですが、大学では建築科に進みます。しかし大学2年のころから学校には行かなくなり、夜な夜なイスタンブールの裏町を彷徨し、貧しいうらびれた街の空気を表現するためには画家ではなく作家になろうと決心したと言っています。

「わたしの名は紅」「無垢の博物館」でも、舞台になっているイスタンブールの街が小説の大事な要素になっています。
この本を読んで、作家の創作にとってイスタンブールという場所がいかに大きな意味を持っているのかがよく解ります。
まだ読んでいない彼の作品をもう少し読んでみたいと思います。
Posted by kozyken
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