「国のない男」 カート・ヴォネガット
ヴォネガット


去年の春に僕の好きな作家、カート・ヴォネガットが亡くなりました。

好きな作家がいなくなるということは、悲しいことであるし、ファンとしては新しい作品が読めなくなると言う困ったことにもなります。
しかし最近、今まで書店の本棚から消えていたヴォネガットの作品が再び並ぶようになったということもあって、僕は去年、何冊か続けて彼の作品を読みました。

ヴォネガットは、SF作家と言うことになっていますが、いわゆるサイエンスフィクションとは、少し違っています。彼がいつも考えていること、作品のテーマがSFと言う形を採ると表現しやすかったと言うことではないか、と僕には思えます。
戦争、貧困、人種差別、政治、独裁者、環境破壊、人間を蝕む機械的な労働、などなど、繰り返し彼の作品に出てくるテーマに対して、痛烈な批判とアイロニー、そしてそれを際立たせるユーモアの感覚があふれています。
そのような彼の作品に共通する主題は、人間のおろかさ、と言うこと。ヴォネガットは言っています、「今まで書かれた偉大な小説は全て、人間のおろかさについて書かれたものだ」と。

ヴォネガットの最期の本がここで紹介する「国のない男」です。
これは小説ではなく、エッセイ集です。彼としては、最期に自分の思っていることを小説と言う形ではなく、直接自分の言葉として話しておきたいと思ったのかもしれません。
彼の生い立ちから、アメリカと言う国について、生きているということ、文学、音楽について、やはり小説と同じように痛烈なアイロニーとユーモアで書かれています。
ヴォネガットの本は、どれもテーマの重さを感じさせずに、読むものを優しい気持ちにしてくれるのは、全編にちりばめられているユーモアの感覚のせいでしょう。
この本では、各章ごとに彼の絵が挿まれているのですが、いかにもヴォネガットらしいユーモアにあふれています。

この本は、ヴォネガットのファンにはもちろんですが、彼の本を読んだことのない人にもお勧めの一冊です。
ただし、忠告。読んでいるとついつい、彼独特のユーモアにニヤニヤしてしまうので、電車の中では読まないように。

Posted by kozyken
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