クローンタイルの取材
この前、上野にあるビルの改修工事でクローンタイルというものを使った話をしましたが、丁度今、以前書いた建築材料の本が改訂版を出すことになったので、その本の巻頭特集に掲載する予定で静岡のヤグチ技工という会社へ取材に行ってきました。

静岡の三島駅までヤグチ技工の社長の矢口さんが直接迎えに来てくれました。車の運転をしながら、すぐに話が始まってそのまま取材につながるという感じで話好きでいかにも積極的な人柄の人でした。

ヤグチ技工はもともと、ビルやマンションの改修工事を行う会社でした。10年程前にビルの改修工事で現場のタイルに合わせて焼成したタイルが張っているときは気が付かなかっとそうですが、足場から降りて下から見上げると明らかにそこだけ色が違って見えることが気になったということです。もともと絵を描くことが得意だった矢口さんは、塗料と筆を持ってもう一度足場を上り、そのタイルに何度も色合わせをして、どうにか違いが判らないレベルまで修正することが出来たということです。
その時は、塗料の耐久性も信頼できるものではなく、これが製品化できるとは考えていなかったそうですが、その後耐候性無機塗料が出てきて耐久性にも目途がついたので5年ほど前から製品として作り始めたということです。

ヤグチ技工での取材風景

本社の社長室でサンプルを見ながらいろいろとお話を伺ったのですが、ユニークなのはすでに廃番になっていてしかも複雑な形状をしたタイルの場合、現物からシリコンで型を取りそこに樹脂を流し込んで原版を作り、それに先ほどの特殊塗装を施して本物そっくりのタイルを作る技術です。これは手で曲がるほど柔軟性のある樹脂なので、下地のコンクリートにクラックが入っていても、再びクラックが入る心配がないということでした。触ってみると一見タイルなのにやわらかいという不思議なものでした。

樹脂で作った原版と、塗装を施した完成品

年々注文が増えて、現在月産8千枚ほどを、社長も含めて4人の職人で作っているということですが、これ以上職人を増やすことも、仕事量を増やすことも考えていないということでした。
建築の世界は、製法が一般的に普及して同業者が増えれば後は値段のたたき合いになってしまい、薄利多売の世界になってしまいます。それよりは、小さな規模で、自分の納得のゆく仕事を続けたいという考えのようでした。難しい選択でしょうが、これは一つの見識だと同感しました。

工場で塗装をかけている職人さん

塗料の乾燥室

この後、山の中にあるいかにも手作りの工場も見学させてもらったのですが、この日の取材で一番興味深かったのは、この社長の矢口さんという人物だったのかもしれません。
僕たちはいつも建築の設計という狭い世界で仕事をしているので、今回のように少し違う分野の人と話をする機会はとても良い刺激になります。
Posted by kozyken
category:建築
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